2023年10月からTBS「日曜劇場」で放送されたドラマです。

原案として、菊地高弘さんの「下剋上球児 三重県立白山高校、甲子園までのミラクル」の実話のエピソードを軸に、登場人物などは全てフィクションで描かれている作品。

三重県の「荒れた高校」である「越山高校」の野球部員はたったの一人。そこに、三重県内の野球強豪校からスカウトされたものの、学力が足りなくて入学できなかったピッチャーの犬塚翔が入学してきます。

犬塚翔は地元の大地主である犬塚樹生の孫息子。樹生は孫のために野球場まで作ってしまうほどの溺愛ぶり。さらに越山高校を甲子園に出場させるために、周りに無茶を言ってかきまわします。

そんな流れに乗って越山高校にやってきた、横浜の野球強豪校で野球部員に栄養などの指導をしていた経験のある家庭科教員、黒木華さん演じる山住香南子。
かなりの野球好きで、越山高校を甲子園に出場させるために色々と考えるのですが、幽霊部員たちの心を動かすことは難しく、空回りしてしまいます。

そこで、鈴木亮平さん演じる、社会科地理・歴史担当教師の南雲脩司に白羽の矢が立ちます。かなりの野球好きで知識もあるにもかかわらず、なぜかかたくなに野球部に関わることを拒み続けるものの、結局監督を引き受けることに。

やる気のなかった部員たちを少しずつやる気にさせ、新入部員も加わってようやく試合出場ぎりぎりの10人が揃います。脩司の野球への思いと、自身の育った環境から生まれる生徒たちを思いやる力とで、徐々に生徒たちが生き生きと野球に取り組み、前向きに人生を生きるようになっていく様がとてもキラキラとして、観ていてわくわくします。

そんな脩司が、野球に関わることを拒み続けてきた衝撃の理由が明らかとなり、窮地に立たされることに…。

そのような辛い状況でも、逃げずに前を向いて生きようとする姿に胸を打たれます。そして、そんな脩司に一度は絶望した生徒たちが、もう一度監督にさせるために奔走する姿にも感動。

野球はチームプレイであり、さらに監督が采配をふるって選手を動かすという性質上、どうしても嫌な意味でのいわゆる「スポ根」体質を感じてしまうことがあるのは、私だけではないと思います。

しかし、このドラマでは、監督は選手の特徴を見抜いて最大限にいかし、選手は監督や仲間を信頼して自分の役割を持てる力を最大限に発揮して全うしようとし、OBはじめ街の人たちは全力で応援するという、野球ならではの魅力や素晴らしさ、輝きのようなものを見せてくれます。

はじめは野球も下手くそだし、すぐサボるし、ヤンチャで暴力的だった生徒たちが、誰に言われたからでもなく髪を黒くしたり坊主にしたり、カチンとくる場面でもお互いに声を掛け合って耐えたりと成長を見せ、人生の中でやりたいことが見つかるということのパワーを感じさせてくれます。

そんな姿を見て、自分も熱くなれることが欲しいなと思ったり、子供達にも見つけて欲しいなと願ったりしました。

それにしても、ドラマの中でストーリーに合わせた球を投げ、必要な場所に打って、狙ったタイミングで狙ったプレイをする、というのはとても大変なことなのではないでしょうか。

鈴木亮平さんや黒木華さんはじめ、野球部員たちの演技が素晴らしく、並の努力では撮れなかったのではないかと思います。

Wikipediaによると、野球の実技や演技などを審査して出演者を決めるオーディションを行ったようですね。
田中将大さんが解説で出演されていたり、実際の実況アナウンサーが実況していたり、最後の甲子園のシーンはエキストラ500人を動員して撮影されていたりと、かなり胸熱な制作秘話があります。

現場の本気度といいますか、情熱といいますか、そうした熱気は見る方に伝わってきますよね。

なんとなく、定年で引退する教師を生瀬勝久さんが演じているのもあり、やはりヤンチャな生徒たちが成長していく物語「ごくせん」のドラマを思い出しました。

青春の熱い気持ち、汗と涙、負けた悔しさと勝った喜び、そういったパワーを感じたい方にはおすすめのドラマです。このドラマがお好きな方は「ごくせん」もぜひ観てみてください。

ごくせん（第1シリーズ）【ドラマ・漫画】の感想