2015年7月からテレビ朝日の「金曜ナイトドラマ」で放送されたドラマ。
原作は、あの「倍返しだ!」で話題になった「半沢直樹」の作者でもある池井戸潤さんで、2010年に単行本が発売された作品です。
池井戸潤さんが原作のドラマは何作か観てきましたが、元銀行マンだった経歴を活かした銀行の内部事情を絡めたストーリーが秀逸で、どれも面白かったです。
この作品では、ちょこっとだけ、知り合いのお店が融資を断られた銀行に面接に行く場面で出てくるだけで、主に政治家の私生活と、政治家を取り巻く特殊な環境や論理がテーマになっています。
ストーリーとしては、念願の総理大臣になった父親と、エスカレーター式で大学まで進んだ息子とが、体が入れ替わってしまったことで、さまざまな騒動を起こす、という突拍子も無い、でも使い古された感のあるドタバタコメディの要素が強いのですが、その根幹に流れるのが、親と子のすれ違いだったり、本当に大切なものは何かという問いかけだったり、むしろそちらがメインで伝えたいために、体の入れ替えという要素を盛り込んだのかな、という印象を受けました。
コメディとしての面白さで大笑いする場面もたくさんありますが、本質的には、共感してクスッと笑ったり、泣けてきたり、じんわりと感動したり。そうした良質のドラマでした。
原作は読んでいないのですが、Wikipediaで見る限り、設定はドラマとかなり違っているところがありますね。
ただ、小説「民王」のレビューを見ると、概ね原作もドラマも好き、という感想が多かったように思います。
菅田将暉さん演じる息子の翔は、原作では粗暴なヤンキーと説明がありますが、ドラマでは心優しく気の弱い子。
「未曾有」を「ミゾーユー」と読んでしまったり、周囲から”バカ”と揶揄されるような大学生で、初めは失敗続きでヒヤヒヤしたりドキドキさせられたり。ある意味母親とか親戚のような目線で見てしまいました。
遠藤憲一さん演じる父親の泰山は、自信家で声が大きく、元相撲部で喧嘩も強い。清濁併せ吞みながら、ようやく手に入れた総理大臣の切符。政党の支持率が下がり、後がない中で回ってきたチャンスを、どうにか「乗り越えられない山はない!」と強く進んで行こうとする。
そんな親子が入れ替わり、主演のお二人は全く正反対のような役を演じることになるわけですが、もう、どうみても魂が入れ替わっているようにしか見えない。すごいです。
ちょっとコメディが行きすぎている部分もあり、都合が良すぎたり、現実離れしすぎて見える点もありつつ、ぐいぐいと引き込まれ、最後にはホロリとさせられました。
翔も泰山も、お互いの立場を体験することで、自分が見えていなかったものを見たり、忘れていたことを思い出したり、原点の本当に大切なものを大切にする勇気を持ったり。
登場人物と一緒に感情が揺れ動き、清々しい気持ちになりました。
原作
池井戸潤『民王』(文春文庫)
脚本
西荻弓絵
監督
木村ひさし 本橋圭太
チーフプロデューサー
大川武宏(テレビ朝日)
プロデューサー
飯田爽(テレビ朝日) 菊池誠(アズバーズ) 神山明子(アズバーズ)
制作協力
アズバーズ
制作著作
テレビ朝日
出演
遠藤憲一 菅田将暉 本仮屋ユイカ 知英 山内圭哉 峯村リエ 六角精児 高橋一生 金田明夫 草刈正雄(特別出演) 西田敏行 原金太郎 池谷のぶえ 信江勇 谷田川真理子 猪野学 朝倉伸二 矢野通 レックス・ジョーンズ Luce Twinkle Wink☆ 玉ノ井親方 富士東和佳 丸井大福 相沢まき 越村友一 津乃村真子 大出俊 山田明郷 池田鉄洋 ちすん 水上京香 渡洋史 安藤聖 生駒星汰 サミ・ポップ 四方堂亘 大葉健二 オカダ・カズチカ ほか
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