2023年にPrime Videoで配信されたドラマ。2012年に刊行されたノンフィクション作家・佐々涼子さんの著書が原作。
2024年にはNHKのBSプレミアムドラマ枠で放送された社会派のドラマです。

羽田空港内にあるエンジェルハースという会社は、海外で亡くなった方を日本へ、逆に日本で亡くなった海外の方を現地の遺族の方に届ける「国際霊柩搬送業者」。

実在するお仕事だそうで、原作は開高健ノンフィクション賞を受賞しているそうです。

あたりの強い社長の伊沢那美を米倉涼子さんが、柄の悪い会長の柏木史郎を遠藤憲一さんが演じておられて、ちょっと「ドクターX〜外科医・大門未知子〜」を彷彿とさせる雰囲気もあるのですが、まっすぐな信念に基づいて遺体を綺麗にし、苦労して搬送し、遺族と対面させる姿に胸を打たれ、いつのまにか物語に引き込まれていました。

そんな視聴者の目線と同じ目線で状況を感じているのが、新入社員の高木凛子。松本穂香さんが演じています。

まるで任侠一家のような社長と会長のやりとり、ちょっと怪しく訳ありげな他の社員たちを、一歩引いた目で見ています。

視聴者はそんな凛子と一緒に、少しずつ彼らへの見方が変化していくのを感じていくことと思います。

どうしてそこまで、と思うほど一生懸命に無理を通したり、とにかくご遺族とご遺体が良い対面ができるように細心の注意を払ったり。そうした一連の仕事には、それぞれの経験と思いが関わっています。

そして、凛子にも胸に隠している思いがあるのですが、会社の人たちやご遺体となってしまった人、ご遺族の人生に触れることで、少しずつ変化していきます。

テレビなどのニュースや新聞では、無表情の顔写真と共に亡くなったことを淡々と伝えられるだけで、少しはその亡くなった状況に思いを馳せて気の毒に思うこともあるかもしれませんが、このドラマを見ると、亡くなった方にも人生があり、その人生の最終地点なのだということを、もっと深く感じる必要があるのだと思わされます。

自然災害など、ご遺体と対面することができないままの方もたくさんおられるかと思いますが、このドラマでは、ご遺体と良い対面をすることの大切さもメッセージとして発信しているように思います。

生きること、死ぬこと、人生、家族、縁…いろいろなことを考えさせられるドラマです。でも、決して暗い気分や重たい気持ちにならず、米倉涼子さんが天使の羽を見つめるイメージ画像のように、ほんのりと厳かで静謐な気持ちになりました。

EMI EVANSさんの天国を感じさせる荘厳な歌声と、AYUKO SAITOさんの天使のように澄んだ歌声も心に残ります。

脚本は、「リーガルハイ」やNHK大河ドラマの「どうする家康」を手がけた古沢良太さんと、「ドクターX〜外科医・大門未知子〜」の脚本も手がけた香坂隆史さんです。「相棒」シリーズで古沢良太さんの脚本の回が好きなんですよね。

監督の堀切園健太郎さんは、「スニッファー 嗅覚捜査官」で演出を担当されています。このドラマも阿部寛さんがいい味を出していて面白かったです。他にもNHK朝ドラ「ちゅらさん」大河ドラマ「篤姫」でも演出を担当されています。