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CRISIS 公安機動捜査隊特捜班【ドラマ】の感想

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2017年4月からフジテレビ系で放送されたドラマ。

前回感想を書いた「BORDER」と同じく金城一紀さんが原案と脚本を担当されています。

先に言ってしまうと、この「CRISIS 公安機動捜査隊特捜班」は、まったく「ながら見」には向きません…笑。なぜならアクションが見どころなので。家事をしたり、障害っ子の世話をしながらチラチラと画面を見つつ、ほぼ音だけ聞いていて、モンモンとしてしまいました。笑。

しかしながら、やはり詩的といいますか、小説を読んでいるように完成されたセリフを聞いているだけで、きちんとストーリーは把握できるようになっているので、時々観て音を聞きながら愉しませていただきました。

どうしても「BORDER」と比べてしまうのですが、このドラマの主人公である稲見朗(いなみあきら)も境界線で常に葛藤しつづけている男です。「BORDER」でも主人公を演じた小栗旬さんが演じられています。

自衛隊員として任務にあたった際に与えられた命令を実行したことがきっかけで、境界線をさまようように生きるようになります。

国を良くしている、国民を守っている、という使命感で懸命に働いてきた自分を、自分で裏切るような命令の実行。国や国民ではなく、国家権力をにぎる一部の権力者を守るために利用されているのでは…と気づいて自衛隊員を辞める。

酒を飲み、女性とその場限りの関係を続けながら、どうにか境界線をさまよい生きる稲見を、田中哲司さん演じる警視庁公安部公安機動捜査隊特捜班の吉永三成(よしなが みつなり)がスカウトし、チームの一員となります。

チームのメンバーも、過去にいろいろと抱えている一癖も二癖もある、警察官らしくない人物たち。彼らもまた、それぞれに葛藤を抱えています。

吉永三成はチームリーダーとして上の意向とメンバーの抱えるものとの間で葛藤している。

西島秀俊さん演じる田丸三郎は、公安部外事課にいたころに潜入捜査の協力者になるよう説得した男性の苦悩と向き合い、男性の美しい妻から寄せられる自分への想いと自分自身のとるべき行動のはざまで葛藤している。

野間口徹さん演じる樫井勇輔は、元機動隊爆発物処理班に所属していた匂いが色分けされて見える「共感覚」の持ち主で、友達がいないという話がでたことから、特殊な能力と優秀な頭脳で周りとなじめずに来たのだと推察される。

新木優子さん演じる大山玲は、ハッカー時代、世の中を良くしようという志で、ハッカー仲間とトゥルーストゥルーパーズというチームを結成したが、法を犯して世の中を良くするという方法に限界を感じ、「体制側」に。かつての仲間がテロを起こすのを阻止したものの、若者が体制側に搾取されており、それを変えなくてはならないことも分かっている。

そんな体制側にいる彼らは、境界線のぎりぎり「こちら側」にいるに過ぎず、ストーリーに次々と登場してくる、犯罪を犯しても体制側に一矢報いようとする「あちら側」の人間たちは、未来の彼らかもしれない。そんな未来の自分に引き込まれ、境界を越えそうになりながら、ひとすじの光をよすがに必死で「こちら側」に戻ろうと葛藤する。

境界線を越えそうになる者、越えてしまった者。その間には何があるのでしょうか。ほんの紙一重、紙一枚の境界でしかないのかもしれません。
最近、若者の犯罪が増えていますし、財務省へのバッシングも大きくなっていますよね。搾取する側とされる側が2017年時点より明確になってきて、テロや犯罪に足を踏み入れてしまう人の気持ちもわかるような気がする方も多いのでは。

他の方の感想・レビューを読みましたが、最後中途半端に終わって不完全燃焼だという意見が多く見られました。
「BORDER」も同じように完結しないような終わり方で、3年後のスペシャルで回収しているように感じましたので、本当かどうか分かりませんが、小栗旬さんがフジテレビ側ともめて打ち切られたという説がささやかれるのも分かる気がします。

でも、小説ではこうした、読者に考えさせる最後って結構ありますよね。

直木賞作家が脚本家という、小説家ならではのラストだったのかもしれないと、私は感じました。

境界線を越えたのか。誰が越えたのか。境界線で葛藤し続けるのか。そこは私たちが想像し、この社会で自分がどう振る舞うか、これからの社会をどうしていきたいか、問いかけられているように感じました。

とても哲学的というか、社会問題と正面から向き合っている作品ではありますが、一方で本格的なアクションを取り入れたエンターテインメント作品でもあるだけに、最後の終わり方に納得できない方も多くいたのかなと推察します。

蛇足ですが、演出家の鈴木浩介さんは俳優の鈴木浩介さんとは別の方なんですね。
あと長塚京三さんの作品を観たのが久しぶりだったのですが、相変わらずかっこいいですね。このドラマはもう7年前の作品ですけれど、最近主演された映画「敵」で東京国際映画祭の最優秀男優賞を獲得されたそうですし、NHKのプレミアムドラマ「広重ぶるう」では葛飾北斎役をされています。いつかゆっくり観たいと思います。

それにしても、俳優さんたちのアクションがすごい。1年以上前から稽古をされていたそうです。吹き飛ばされて体を打ちつけるシーンなど、どうみても痛そうだし、高いところから飛び降りたり、走ってくる車を飛び越えてかわしたり。とにかくすごい。

アクションがお好きな方は楽しめるかと。ただ、スカッとする系のアクションドラマではないです。「BORDER」と同じく、精神的に弱っている時は観ない方がいいかもしれません。重たいテーマでもあるので、弱っている時は気持ちが暗くなってしまうかもしれないです。

「BORDER」を観た方は、ぜひ観ていただきたいと思います。「BORDER」のストーリーの中で巨大権力に事件をもみ消されたままになっていてモヤモヤしていたところを、このドラマでちょっと回収しているようなところもあります。まあ、権力者をギャフンと言わしてスカッとするような内容ではないのですけれど、ちょっとだけ溜飲が下がるかもしれません。

原案・脚本

金城一紀

音楽

澤野弘之
KOHTA YAMAMOTO

主題歌

Beverly「I need your love」(avex trax)

チーフプロデューサー

笠置高弘

プロデューサー

萩原崇

演出

鈴木浩介
白木啓一郎

アソシエイトプロデューサー

坂田佳弘

出演

小栗旬 西島秀俊 田中哲司 野間口徹 新木優子 長塚京三 飯田基祐 眞島秀和 石田ゆり子 野崎萌香 芹澤興人 白洲迅 堀部圭亮 桜井聖 井桁弘恵 石黒賢 大西武志 山口祥行 岡部たかし 螢雪次朗 小市慢太郎 奥貫薫 近藤公園 浜田学 杉本哲太 神尾佑 山中アラタ 山口馬木也 嶋田久作 山口翔悟 奥田達士 今井悠貴 金子ノブアキ 竜雷太 新実彰平 長田成哉 ほか

制作協力

ジニアス

制作

カンテレ

カンテレ番組公式ページより引用 Wikipediaより引用

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